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地域電器店APPLIANCE STORES

地域電器店の概況

 地域電器店の2014年度のチャネル別シェアは、前年度より0.1ポイントマイナスの6.5%であった。チャネル別シェアは主要家電35品目を対象としており、工事やサービスの売上構成比が高い地域電器店の場合、売上高シェアならばこれより数ポイント高いスコアになるはずである。それにしても、かつては家電流通の担い手であった地域電器店は、家電量販店にその地位を奪われてからは、縮小の一途をたどっている。
 現在では、企業規模・店舗規模で圧倒的に上回る家電量販店や大型カメラ店に真っ向から対抗して勝ち残るのは極めて難しい。地域電器店の減少理由に店主の高齢化や後継者不足を挙げる向きは多いが、直接的には、厳しすぎる経営環境の中で業績不振に陥り、事業を継続できずに廃業する店が多いというのが現実である。
 商業統計の平成26年(2014年)調査では、大多数の地域電器店が該当する「従業者4人以下の電気機械器具小売業」の事業所数は21,665で、平成19年調査よりも9,546の減少である。平成19年調査と平成26年調査とでは、間に産業分類の見直し等があり、厳密には同一ベースの比較とは言えないが、たとえ誤差があったにしても7年間でおよそ3割もの事業所が減少したということは、地域家電店がいかに厳しい状況に直面しているかを如実に表している。年間商品販売額に関しても、事業所数が減っているのだから当然販売額も減少しており、平成26年は19年比2割強のダウンで、6,200億円になっている。
 1事業所当たり年間商品販売額は、19年より292万円プラスの2,862万円となっている。これは26年のデータが、多くの店が消えていった状況の中を生き抜いた地域電器店の実績だからで、販売効率がアップしていても何の不思議もない。それでも、冷静な見方をすれば、2,862万円は優良地域店であれば従業員1.5人分程度の販売額であり、いわゆる「パパママストア(夫婦とその家族あるいはパートタイマー1-2名を使って経営している店)」でも到底十分とは言えないレベルである。よくメーカーやコンサルタントがパパママストアに対しても「年商1億円」を売上高目標に掲げるが、これは、年商が1億円あれば夫婦で1,000万円の手取りが見込めるし、子どもや従業員が後継者となって店を継いでくれる確率も高い、というのが基準となっている。しかし、実際に統計をとってみれば、年間商品販売額は3,000万円に満たない。仮に同額の工事・サービス売り上げがあったとしても6,000万円に届かない。「年商1億円」を実現できている地域電器店はそれほど多くないと、容易にデータから推察することができるのである。

■商業統計調査/電気機械器具小売業(従業者4人以下)の事業所数・年間販売額推移
  平成19年調査 平成26年調査
実  数 対19年増減
事業所数 31,211 21,665 ▲9,546
年間商品販売額(百万円) 802,037 620,061 ▲181,976
1事業所当たり年間商品販売額(千円) 25,697 28,620 2,923


 近年、インターネット通販など新たな競合も加わり、地域電器店を取り巻く市場環境は厳しさを増す一方だ。今後も地域電器店数は、減少傾向に推移することは避けられないだろう。ただし、現在活動している地域電器店の多くは、これまでの厳しい環境の中を生き抜いてきた“強者”でもあり、一部には大手量販店の店舗が複数出店しているエリアでも、それらをものともせず優秀な実績を積み重ねている有力店もある。「地域電器店はいずれなくなるもの」と自ら決めつけず、むしろ「地域電器店には地域電器店として存在価値を発揮できる“活路”が必ずある」という強い信念を持ち、その活路を切り拓くための活動を日々実践することが、今後も生き続ける地域電器店の絶対条件と言えよう。

有力地域店の戦略

 これまで地域電器店の“生き残り策”として言われてきたことは多々あるが、それらの施策の基本にあるのは、大きく2つ。1つは“家業を企業化”する「経営基盤の改善」、もう1つは地域電器店としての“地域密着”を前提とした「量販店との差別化」である。特に家電メーカーが自社系列店に対し提案・指導・支援してきた地域店政策は、いずれもその時々で的を射たものであったと言えよう。直近ではリフォームやスマートハウス提案が主流だが、これまでの経緯、さまざまなデータや事例をみると、これを採用しない理由が見当たらないほどだ。しかし、メーカーやコンサルタントなどがどんなに正しい政策を提案しても、それを採り入れるかどうか、それをどう店の活動に組み込み実施するかは、個々の店の裁量に任せるしかないのだ。
 ここで、家電専門誌はもとより一般ビジネス紙誌にも紹介されるような有力地域店の実施している施策はどのようなものか、例として東京・町田市の「でんかのヤマグチ」を見てみよう。ヤマダ電機、ヨドバシカメラ、コジマ、ノジマなどの大手量販店舗がひしめき合い量販店激戦区となっている町田市にあって、同社は「遠くの親戚より近くのヤマグチ」と言われるほど地域住民の支持を得ている地域電器店である。
 同社の最大の特徴は、データを基に絞り込んだ優良顧客に対し、手厚いサービスを徹底しているところだ。(詳細は同社のホームページ http://d-yamaguchi.co.jp/を参照)
 具体的なサービスをいくつか挙げると、
 ・電球1個の交換でもすぐに駆けつける
 ・高齢者には難しい録画予約やリモコン操作、今日のドラマの番組予約など、何度でも丁寧に説明する
 ・冷蔵庫が壊れたときには,修理の前に、クーラーボックスに氷を入れて持って行く
 ・頼まれれば、部屋の模様替えやタンスの移動も手伝う
 ・頼まれれば、ペットのエサやり、庭の水まきもする
・・・・というように、家電関連はもちろん、家電に関係のないことでも、顧客に対し徹底して「お役に立てることは何でも行う」のである。これは店舗においても同様で、例えば駐車場やトイレの開放、地域の詳細地図観覧サービス、救急箱やAEDの設置、雨の日の傘貸しなどさまざまなサービスを実施。さらに、毎週のようにイベントを開催し、旅行やバスツアーなども企画実施する。顧客に「喜んでもらう」ために、家電の枠など超越している。ここまで徹底しているから、同社の販売価格は量販店よりはるかに高いのに、顧客はすすんで同社を選ぶのである。
 多くの地域電器店は「顧客のことは何でも知っている」「サービスで差別化している」と言うし、それなりのことは実施しているだろう。しかし、「差別化」とは、講じた策が大多数のお客に認められ、かつ魅力に感じてもらって初めて成功であり、その域に到達しなければ、どれだけ苦労を重ねようと、何もしていないのに等しい。十分にやれていないのに、自分だけ「やり切った」と勘違いしている店が多いのが問題なのである。ヤマグチのような有力店と、がんばっているのに実績が上がらない多くの店との最大の違いは、トコトンやり通せる『徹底力』と『継続力』だと言えよう。
 先進国の中でも群を抜いて高齢化率が高い日本では、地域電器店の特色である“地域密着”が他の業態を上回る「強み」になることは間違いない。これまでは減少トレンドで推移してきたが、多くの地域電器店が差別化に成功し、顧客に対する自店の存在価値を高めることができれば、この先、トレンドカーブをマイナスからプラスに転ずることも、決して不可能ではない。



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