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家電量販店MAJOR APPLIANCE STORES

家電量販店の概況

 現在、国内の民生用家電製品のおよそ2分の1を売り上げているのは家電量販店である。
 表に示した上場量販店8社の2015年度連結売上高を合計すると3兆8,688億円になり、全家電量販店売り上げの85%程度を占めると推察される。さらに、上位5社の総合家電量販店だけでも3兆7,800億円となり、全家電量販店売上高の8割以上をこの5社で売り上げている計算になる。家電量販店の上位企業は、家電小売業のみならず他業種を含んだ日本の小売業全体の中でも上位にランキングされる大企業である。実際、日経新聞社が毎年実施している全国上場企業の売上高ランキングによると、2015年度の「小売業」部門では、ヤマダ電機は4位、ビックカメラは9位、エディオンは10位、ケーズホールディングスは14位、ノジマは23位、上新電機は30位と、いずれも上位にランキングされている。
 このように大企業が連立する家電流流通業界ではあるが、「売っているものは同じ」という家電販売の特質のため、業績の上昇・下降の波は、各社とも同じような波形に推移することになる。特に近年、家電市場は、国の“景気回復策”に翻弄された感がある。
 2011年度は、前年度末(2011年3月)で終了した家電エコポイントの反動で消費低迷に見舞われ、夏場はアナログ停波前の駆け込み需要で多少は潤ったものの、その後の反動は予想以上に大きく、かつ長引いた。
 2012年度は、前年度に引き続き先の見えない不安感で消費マインドが冷え込み、結局1年を通じて全国的な消費低迷に明け暮れた。
 2013年度は、多少は消費者も市場環境に慣れてきたことと、一部エコポイント中に購入した商品の買い替え・買い増しなども見られるようになり、また、年度内に消費増税前の駆け込み需要も見込めていたため、家電業界関係者の中には「これで下げ止まるか」と期待した向きも少なくなかった。
 しかし、消費税が8%に上がった2014年度は、増税前の駆け込み需要の反動と、消費税が上がったことでの買い控えとがダブルで市場を冷え込ませ、需要回復に期待をかけた多くの関係者に「家電市場はこのまま縮小トレンドから抜け出せないのではないか」と懸念させるほどのダメージを与えたようだ。
 この間、当然、家電販売のナンバー1チャネルである家電量販店も苦戦が続いていたことは、各社の売上高推移を見ていただけば一目瞭然だろう。
 2015年度決算でも、売上高はほぼ横ばいであった。家電需要がプラスに反転するという明確な兆しは見られない。しかし、利益面では各社とも前年より向上させている。これは各社が、現在の需要低迷を異常ととらえず、「これが普通の状態」だと受け入れ、自らを環境に適合させようと努めたためだろう。競合他社との過剰な販売競争に走らず、企業体力の回復に努めた結果、利益面の改善につながったものと推察される。
 家電市場を取り巻く環境を考えると、家電量販店各社は基本的に2016年度以降も、前年度の政策を踏襲・強化し、更なる経営の健全化を志向するものと推測される。短期的には急速な需要回復は考えにくい。中期的には、消費税率10%への引き上げは再延期されたが、2019年10月から導入されたら国内市場はどうなるか、そして2020年には東京五輪特需が控えているが、家電市場への影響はどの程度か。そのような複雑な事象をどうとらえて経営計画に組み込んでいくか、家電量販店各社の経営手腕が問われるところだ。

■上場量販店の連結売上高推移
企業名 決算月 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度
ヤマダ電機 3月 1,835,454 1,701,489 1,893,971 1,664,370 1,612,735
エディオン 3月 759,025 685,145 766,699 691,216 692,087
ケーズHD 3月 726,015 637,497 701,198 637,194 644,181
ノジマ 3月 211,051 199,976 218,402 244,067 454,842
上新電機 3月 410,174 365,958 401,798 372,385 375,782
PCデポ 3月 49,693 51,354 53,816 51,286 51,784
アプライド 3月 25,450 23,985 27,720 26,720 29,002
ZOA 3月 12,622 12,087 13,897 9,633 8,358
(参考)            
コジマ 8月 370,380 281,940 262,292 226,124 226,297
ベスト電器 2月 261,705 184,310 173,364 175,114 170,512
ヨドバシカメラ 3月 671,400 637,100 690,800 651,500 679,600
ビックカメラ 8月 518,057 805,378 832,748 795,368 779,081
※ZOAは非連結
※コジマ、ベスト電器は上場を継続しているが、コジマはビックカメラの、ベスト電器はヤマダ電機の連結子会社であるため“参考”とした
※コジマは2012年度期中に決算月変更を行ったため、2012年4月〜8月の変則決算期があったが、他社比較のため上表には記載していない
※参考として掲載した大型カメラ店2社のうち、ヨドバシカメラは非上場、ビックカメラは2012年度よりコジマの売上高を含む

■上場量販店上位5社の経常利益率推移
    

上場量販店の経営指標推移

 前項でも触れたように、家電量販店各社の2015年度決算では、収益性の改善が見られた。それに伴い生産性、安全性や活動性も高まっていると推測されるが、実際のところこれらの判断基準となる各種指標はどうなっているのか、上場8社の主要な経営指標を確認しよう。
 経営指標は分析目的によってさまざまな指標が用いられるが、ここでは代表的な10指標を掲載した。

【収益性分析の指標】

1.総資本経常利益率(ROA)
企業名 2014年度 2015年度 増減 総資本経常利益率は、資本収益性を判断するための指標である。
会社が投入した資本に対して、どれだけの利益を上げたかを表す。
計算式は、
 経常利益/総資本×100
当指標は、数値が大きいほど収益性が高いことを示す。
指標値 順位 指標値 順位
ヤマダ電機 3.07 5 5.53 5 2.46
エディオン 2.95 6 4.75 6 1.80
ケーズHD 6.75 2 7.36 3 0.61
ノジマ 4.07 3 6.34 4 2.27
上新電機 3.71 4 4.38 7 0.67
PCデポ 11.37 1 13.53 1 2.16
アプライド 2.26 8 8.66 2 6.40
ZOA 2.90 7 4.33 8 1.43

2.自己資本当期利益率(ROE)
企業名 2014年度 2015年度 増減 自己資本当期利益率は、資本収益性を判断するための指標である。
株主が投下した資本で、どれだけの利益を上げたかを表す。
計算式は、
 当期純利益/株主資本×100
当指標は、数値が大きいほど収益性が高いことを示す。
指標値 順位 指標値 順位
ヤマダ電機 1.76 8 5.98 7 4.22
エディオン 3.37 6 4.19 8 0.82
ケーズHD 8.89 3 9.13 4 0.24
ノジマ 10.90 2 32.58 1 21.68
上新電機 5.23 4 6.33 5 1.10
PCデポ 13.55 1 15.57 3 2.02
アプライド 2.67 7 19.46 2 16.79
ZOA 4.44 5 6.07 6 1.63

3.売上高総利益率
企業名 2014年度 2015年度 増減 売上高総利益率は、取引収益性を判断するための指標である。
粗利率や荒利率とも呼ばれ、その商品自体がどれだけの利益を上げられるものかを表す基本的な指標である。
計算式は、
 売上総利益/売上高×100
「利は元にあり」と言われるように、当指標は数値が大きいほど収益性が高い。
指標値 順位 指標値 順位
ヤマダ電機 26.3 3 28.5 2 2.2
エディオン 27.5 2 28.3 3 0.8
ケーズHD 25.3 4 26.3 4 1.0
ノジマ 20.7 7 21.1 8 0.4
上新電機 21.4 6 22.5 6 1.1
PCデポ 38.4 1 42.8 1 4.4
アプライド 21.5 5 22.8 5 1.3
ZOA 18.3 8 21.4 7 3.1

4.売上高営業利益率
 企業名 2014年度 2015年度 増減 売上高営業利益率は、取引収益性を判断するための指標である。
営業(販売・管理)活動が適正かどうかを表す。
計算式は、
 営業利益/売上高×100
当指標は、数値が大きいほど良い。
指標値 順位 指標値 順位
ヤマダ電機 1.2 7 3.6 2 2.4
エディオン 1.6 6 2.5 7 0.9
ケーズHD 2.9 2 3.4 3 0.5
ノジマ 2.7 3 3.2 4 0.6
上新電機 1.8 4 2.1 8 0.3
PCデポ 6.0 1 8.3 1 2.3
アプライド 0.9 8 3.2 4 2.3
ZOA 1.6 5 2.5 6 0.9

5.売上高経常利益率
 企業名 2014年度 2015年度 増減 売上高経常利益率は、取引収益性を判断するための指標である。
経常利益は営業活動と財務活動の両方の収益を示すものであるため、売上高経常利益率は企業の業績を端的に表す非常に重要な指標である。
計算式は、
 経常利益/売上高×100
当指標は、数値が大きいほど良い。
指標値 順位 指標値 順位
ヤマダ電機 2.1 4 3.9 3 1.8
エディオン 1.6 6 2.5 7 0.9
ケーズHD 4.1 2 4.4 2 0.4
ノジマ 2.8 3 3.3 5 0.5
上新電機 1.8 5 2.1 8 0.3
PCデポ 6.3 1 8.4 1 2.2
アプライド 1.0 8 3.8 4 2.7
ZOA 1.6 7 2.6 6 1.0

6.売上高販管費率
企業名 2014年度 2015年度 増減 売上高販管費率は、取引収益性の指標である。
売上高に対する販管費(販売費、一般管理費)の比率を示し、販売に要したコストが適切かどうかを判断する。
なお、販管費は売り上げに比例して生じる「変動費」と売り上げに関係しない「固定費」に大別されるが、この2つがどの程度の割合であるかも重要である。
計算式は、
 販管費/売上高×100
当指標は、数値が小さい方が良い。
指標値 順位 指標値 順位
ヤマダ電機 25.1 6 24.9 6 -0.2
エディオン 26.0 7 25.9 7 -0.1
ケーズHD 22.4 5 22.9 5 0.5
ノジマ 18.1 2 17.9 1 -0.2
上新電機 19.7 3 20.4 4 0.7
PCデポ 32.3 8 34.4 8 2.1
アプライド 20.5 4 19.6 3 -0.9
ZOA 16.7 1 18.9 2 2.2

【安全性分析の指標】

7.自己資本比率
企業名 2014年度 2015年度 増減 自己資本比率は、安全性を判断するための指標である。
総資本に対する自己資本の比率を表す指標で、自己資本比率が高ければそれだけ借入金が少なく、健全な経営を行っているといえる。
計算式は、
 自己資本/総資本×100
当指標は、数値が大きいほど安全性が高いことを示す。
指標値 順位 指標値 順位
ヤマダ電機 46.60 2 43.20 3 -3.40
エディオン 39.48 5 39.39 5 -0.09
ケーズHD 43.38 4 47.85 2 4.47
ノジマ 19.98 8 14.34 8 -5.64
上新電機 38.17 6 39.12 6 0.95
PCデポ 51.79 1 61.29 1 9.50
アプライド 25.36 7 27.57 7 2.21
ZOA 44.77 3 42.99 4 -1.78

8.流動比率
企業名 2014年度 2015年度 増減 流動比率は、安全性を判断するための指標である。
流動負債(すぐに返済すべき負債)に対する流動資産(すぐに現金化できる資産)の比率を示し、短期的な返済能力の高さを表す。
計算式は、
 流動資産/流動負債×100
当指標は、数値が大きい方が安全性が高い(200%が理想)
指標値 順位 指標値 順位
ヤマダ電機 146.41 3 168.69 2 22.28
エディオン 144.52 4 160.13 4 15.61
ケーズHD 122.52 7 129.47 6 6.95
ノジマ 134.92 5 129.35 7 -5.57
上新電機 124.50 6 131.54 5 7.04
PCデポ 171.03 2 209.05 1 38.02
アプライド 122.01 8 126.03 8 4.02
ZOA 236.28 1 166.64 3 -69.64

9.固定長期適合率
企業名 2014年度 2015年度 増減 固定長期適合率は、安全性を判断するための指標である。
固定資産の投資が長期的な資本の枠内で行われているかどうかを表す。
計算式は、
 固定資産/(自己資本+固定負債)×100
当指標は、数値が小さい方が安全性が高い。
指標値 順位 指標値 順位
ヤマダ電機 83.97 7 78.23 6 -5.74
エディオン 77.68 3 73.13 3 -4.55
ケーズHD 88.19 8 86.89 8 -1.30
ノジマ 81.84 6 83.10 7 1.26
上新電機 81.77 5 76.23 4 -5.54
PCデポ 53.26 2 41.98 1 -11.28
アプライド 81.58 4 77.10 5 -4.48
ZOA 37.25 1 45.04 2 7.79

【活動性を見るための指標】

10.総資本回転率
企業名 2014年度 2015年度 増減 総資本回転率は、活動性(資本の運用効果)を見るための指標である。
売上高に対して資本がどれくらい回転しているか、つまり、資本を効率的に運営できているかを表す。
計算式は、
 売上高/総資本×100
当指標は、数値が大きいが方が良い。少ない資本で大きい売り上げを上げているということになる。
指標値 順位 指標値 順位
ヤマダ電機 1.44 8 1.42 8 -0.02
エディオン 1.84 3 1.90 4 0.06
ケーズHD 1.66 6 1.66 6 0.00
ノジマ 1.48 7 1.94 3 0.46
上新電機 2.08 2 2.11 2 0.03
PCデポ 1.82 4 1.60 7 -0.22
アプライド 2.20 1 2.30 1 0.10
ZOA 1.82 4 1.70 5 -0.12

 

上場量販店の企業別データ

 上場量販店8社の企業別データを(1)概要・沿革、(2)関係会社、(3)経営指標推移、(4)財務諸表、(5)その他---という形でまとめた。また、8社以外にも、「参考」として大型カメラ店のビックカメラ、ビックカメラの連結子会社コジマ、ヤマダ電機の連結子会社ベスト電器のデータも同様にまとめて掲載している。

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ヤマダ電機

エディオン

ケーズホールディングス
 
ノジマ
 
上新電機
 
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アプライド
 
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ビックカメラ 
 
コジマ
 
ベスト電器


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